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石田『ミッチー・ブーム』

ミッチー・ブーム (文春新書)

ミッチー・ブーム (文春新書)

誘惑にかられて読んでしまう。ミッチー・ブームを膨大な資料によって語らせる方法をとっていて、大変読ませる。よく見つけたなーと感嘆する一次資料が次から次へと登場する。『皇后さま』という小説があったなんて驚愕しましたよ。基本的に、通常通俗的と見なされがち女性誌におけるファッション表象・メディア言説から天皇(制)を論じていて、刺激に満ちている(→だから読むの途中でやめられなかった…)。
1952年、和服の皇后がメディアを通じて披露されたとき、それが衝撃的だった理由は、

日本の文化的象徴である「きもの」を、女性皇族が身にまとうことは今日ではありふれた風景である. . .しかし、明治天皇以後、皇族は日本における西欧化のシンボルとしての役割を果たすべく、公式の場においてきものを着ることはありえなかった。(156)

なんていう意外な指摘に目が輝く。当然出てくるだろうと思っていた多木浩二天皇の肖像』に案の定言及があったので再読したくなったが、これまた案の定紛失していた。例によって、ミッチー・ブームを生の体験として知っている人たちに話を伺いたくなる。